首相の諮問機関である政府税制調査会から、「中期答申」の原案が公にされました。
これは、財政赤字が続く現状において、歳出をまかなうための充分な税収確保という「租税の十分性」を重視する方向性を示しています。一時的に増税の議論を避けている岸田政権に対し、この原案は「必要な税負担は社会全体で分担すべき」と訴え、新たな議論をする形となりました。2019年以降、初めて出されるこの政府税調の答申は、今月中には最終決定され、その後、岸田首相に提出される予定です。
政府税制調査会(首相の諮問機関)が中長期的な税制のあり方を提言する「中期答申」の原案が判明した。財政赤字が続く中、現在の歳出を賄うのに十分な税収を確保する「租税の十分性」を強調している。少子化対策の財源確保で増税論を封印した岸田政権に「必要な租税負担を社会全体で分かち合わなければならない」と説き、一石を投じる内容だ。
経済の効率性への影響と将来世代への負担
答申原案では、社会保障費の拡大に伴い「公債発行が増加している」という日本の財政状況を挙げ、また、「税負担を将来に先送りすることは、経済の効率性に影響を与える可能性がある」との見解を述べています。増税を避けることで赤字国債の発行が増え、その結果として、将来の世代に問題を残す可能性を指摘しています。
租税の十分性を第4の原則として提案
5月の会合で、政府税調の委員の一人は、既存の租税の原則「公平・中立・簡素」に加え、「十分性の原則を、新たな4つ目の租税原則として確立すべきだ」と提案していました。
所得税と消費税についての考察
答申原案では、具体的な課題についても言及しています。所得税については、多様な働き方が増えてきている現代において、サラリーマンと自営業者の間で不公平感が生じないようなバランスを考えることが重要であると主張しています。消費税については「社会保障給付を安定的に支えるために重要」としたものの、税率の引き上げについては明確には触れていません。
租税特別措置の是非
一方、特定の政策目的を達成するために税負担を一時的に軽減する「租税特別措置」については、「企業行動を促すための一時的な手段であり、その効果が認められない場合は、見直しが必要だ」と指摘しています。
しかし、2022年度の国民負担率は47.5%!!既に所得の半分近くを税金や社会保険料として負担しています。
私たちの所得に対する税金や社会保険料の割合を示す「国民負担率」についてお話しします。
つまり、公的な負担の重さを示す一つの指標ですね。2022年度において、この国民負担率が所得のほぼ半分となる、47.5%に上ると見られています。
これは社会が高齢化して社会保険料の負担が増えつつある一方で、企業の業績が回復し、雇用者報酬が伸びたことにより、昨年度よりもわずかに0.6ポイント減少した結果です。
しかしながら、現状の国民負担率は過去3番目の高さに位置しており、国民所得の半分近くを占めています。新年度の国民負担率については、所得の増加が見込まれるため、今年度から0.7ポイント下がり46.8%となる見通しだそうです。
一方、国の財政赤字を考慮に入れた「潜在的な国民負担率」については、今年度は61.1%となる見込みで、大型の補正予算が影響して昨年度より3.7ポイント上昇すると予測されています。
なお、日本の国民負担率は、20年前の2002年度は35%でしたが、高齢化に伴う社会保険料の負担増加などの理由から、2013年度以降は40%を超えています。
これは、日本の社会保険制度の拡大に伴う高齢化、および企業業績の回復による雇用者報酬の増加が影響していると考えられます。昨年度からは0.6ポイント減少していますが、それでも過去3番目の高さを示しており、その重さは私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。
新年度の国民負担率は、所得の増加を反映し、今年度から0.7ポイント下がり46.8%となる見通しです。しかし、全体としては依然として高水準にあることは否めません。
また、「潜在的な国民負担率」、つまり、国の財政赤字を加味した場合の負担率は今年度61.1%となり、大型補正予算の影響で昨年度から3.7ポイント上昇すると見られています。これは、私たちが現在負担している以上の負担が、財政赤字という形で将来に先送りされていることを示しています。
まとめと今後の展望
政府税調の答申原案は、日本経済に対する様々な課題を示しており、増税の議論を避ける現状に対して「租税の十分性」を強く訴えています。これは、国の財政赤字という差し迫った問題に対して、課税による解決策を模索しているというメッセージを示しています。
また、所得の半分近くが税金や社会保険料として納付されるとされる2022年度の国民負担率47.5%という数字は、社会全体の税負担が増加傾向にあることを物語っています。社会保障費の増加と経済の効率性を維持するため、税負担の適正な分配と税収確保の重要性がより一層強調されるでしょう。
しかし、増税という重要な決断を行うには、その影響を十分に考慮したうえで、国民の理解と支持を得ることが不可欠です。そのためには、増税の必要性とその影響について十分に説明し、公平かつ公正な税制を目指すことが求められます。
今後、政府は歳出の抑制策を検討しながら、税制改革を通じて経済の持続的な成長を目指すべきです。その中で、具体的な税率の見直しや税制改革についての議論が深まることでしょう。このプロセスを通じて、より公平で効率的な税制が確立され、日本の持続的な経済成長を支えることを期待します。
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