はじめに
つみたてNISAとは、国が推奨する少額投資非課税制度のことです。最大20年間の非課税期間を持ち、運用益や分配金も税金がかからないため、投資初心者にとって魅力的な制度と言えます。
しかしその一方で、メリットだけでなく、投資経験者ならではの視点から考えると、「つみたてNISAをやらないほうがいい」というケースもいくつか存在します。
つみたてNISAが広く知られているからといって、目的や戦略を明確にせずにすぐに始めるのは避けましょう。運用上のデメリットや注意点をしっかり理解することが重要です。
この記事では、つみたてNISAのメリットの裏側にあるデメリットや、やらないほうがいい本当の理由、さらにつみたてNISAで損をする人と得をする人の違いについて解説します。
※2024年以降のNISA制度では、非課税期間の無期限化などの抜本的な拡充や恒久化が示される方針が示されました。新しいNISA制度について、審議状況により変更がございます。
※この記事は2023年までの現行制度を中心に記載しています。
つみたてNISAとは
つみたてNISAは、少額からの積立投資が可能な税制優遇制度であり、日本に在住し20歳以上であれば、原則として誰でも利用することができる制度です。
通常、投資による利益は20.315%の税金がかかりますが、つみたてNISAを利用すると、投資による利益には税金が課せられません。
また、年間投資額の上限は40万円であり、投資可能期間は2042年までとなっています。
つみたてNISAの3つのメリット
- 運用益が非課税になること:通常の投資では利益に税金がかかりますが、つみたてNISAでは運用益が非課税となるため、受け取る利益をすべて手元に残すことができます。
- 少額・長期・積立投資が可能なこと:少額からの長期的な積立投資は、資産形成に非常に有効な方法です。一度にまとまった金額を投資する必要がなく、初心者にも取り組みやすい手法と言えます。
- 売却して現金を引き出せること:つみたてNISAではいつでも売却して現金を引き出すことができるため、資金の流動性を確保しやすいです。将来的に予期せぬ事態が発生した場合でも、売却することで資金を手元に戻すことができます。
ただし、解約時に元本がマイナスになる可能性もあるため、注意が必要です。
一般NISAとつみたてNISAの違い
一般NISAとつみたてNISAの違いはいくつかあります。
まず、非課税期間の長さです。一般NISAは非課税期間が5年間であり、つみたてNISAは20年間の非課税期間を持っています。
また、非課税投資枠にも違いがあります。一般NISAは年間120万円までの投資が非課税となりますが、つみたてNISAは年間40万円までとなっています。
その他にも、投資可能期間や投資対象の金融商品にも違いがあります。
どちらを選ぶかを決める際には、これらの違いを理解することが重要です。
iDeCoとつみたてNISAの違い
iDeCo(イデコ)は、任意の私的年金制度であり、自分自身が掛け金を拠出し、自分自身で運用方法を選択します。一般的には60歳以降に老齢給付金として受け取ることができます。
つみたてNISAとiDeCoの共通点は、運用益が非課税ということです。しかし、iDeCoでは以下の控除を受けることができます。
- 拠出時に掛金が全額所得控除
- 受取時に退職所得控除や公的年金控除が適用される
また、iDeCoでは一般的には60歳まで引き出すことができません。
経験者が語る!つみたてNISAをやらないほうがいい理由
つみたてNISAを始めたものの、やらないほうがよかったと感じる人も存在します。
その理由を見てみましょう。
- 自分の資産を即座に増やすことができない:つみたてNISAは少額で長期にわたって資産を運用する制度であり、即座に資産を増やす投資方法ではありません。最初の数年から十年ほどは投資額が少ないため、複利効果が十分に現れず、資産の増加を実感しにくいかもしれません。つみたてNISAは長期的な資産形成手法であることを理解しておきましょう。
- 元本が保証されないため、投資額を下回る可能性がある:つみたてNISAでは投資信託を通じて投資を行いますが、株式や債券などの金融商品は価格変動リスクがあり、元本保証はありません。つみたてNISAを始める際には、「お金が増える」という一般的なイメージからではなく、商品の特徴や仕組みを理解した上で検討しましょう。
- 損失が発生しても税金はかかる:つみたてNISAでは非課税期間終了後の税制に注意が必要です。例えば、つみたてNISAで40万円の資産を保有しており、20年後には20万円まで価値が下落したとします。非課税期間は20年で終了しますが、資産は課税口座で保有し続けることができます。一部の人は、資産を課税口座に移して、価格が上がったら売却すると考えるかもしれません。しかし、この場合、売却益はないため税金はかかりませんが、損失も非課税分に含まれることになります。税制の仕組みを正しく理解し、リスクを考慮した運用を行うことが重要です。
以上の理由から、つみたてNISAをやらないほうが良いケースも存在すると言えます。つみたてNISAを始める前には、自分自身の状況や目標を考慮し、慎重に判断することが重要です。投資は個々のリスクを伴うものであり、自己責任で行う必要があります。十分な情報収集や専門家の助言を得て、適切な投資判断を行いましょう。
つみたてNISAは一般的な投資手段でありますが、個々の投資ニーズや目標に合わない場合もあります。例えば、より高いリターンを求める場合や、異なる投資対象に興味がある場合など、他の投資手段が適している場合もあります。自分自身の投資目標やニーズを明確にし、それに合った投資手段を選ぶことが大切です。
まとめ
つみたてNISAは国が推奨する少額投資非課税制度であり、運用益や分配金が最大20年間非課税となる魅力的な制度です。しかし、投資経験者ならではの視点から考えると、つみたてNISAをやらないほうがいいケースも存在します。
まず、つみたてNISAは資産を即座に増やすことができず、少額で長期的な資産形成を目指す制度です。また、投資信託を通じた投資には元本保証はなく、価格変動のリスクが存在します。
さらに、つみたてNISAの非課税期間が終了すると税金の対象となり、損失も含めて課税されることに注意が必要です。また、運用経費や手数料も投資収益に影響を及ぼす可能性があります。
個々の投資ニーズや目標に合わない場合、つみたてNISAをやらないほうが適していることもあります。異なる投資手段を検討したり、リスク管理や運用戦略を考慮することが重要です。
つみたてNISAを始める前には、自分自身の目的やリスク許容度を考慮し、慎重に判断しましょう。投資は自己責任のもと行われるべきであり、専門家の助言や情報収集を活用しながら、適切な投資判断を行いましょう。