会社員にとって数少ない節税対策で老後資金を貯める上で有利なiDeCoにも、退職金を課税対象とされた場合の影響に懸念が広がっています。
政府は6月中に策定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の概要で、退職金所得控除の制度改革や勤続年数による格差の是正を盛り込む方針を示しました。
- 長く勤めるほど優遇される退職金の課税制度を改める
- 「転職すると不利」解消し成長分野への労働移動促す
- 少子化対策や生成AIのルール作りも骨太方針の柱に
政府が6月中に策定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の概要が2日分かった。同じ会社に長年勤めるほど優遇される退職金への課税制度を改め、勤続年数による格差を是正する方針を盛り込んだ。
具体的には、長く勤めるほど優遇される退職金の課税制度を改め、勤続年数に応じて退職金控除額を決定することを変更
控除額の決まり方
勤続年数 | 退職金控除額 |
---|---|
20年以下 | 勤続年数✕40万円 (最大800万円) |
20年以上 | 800万円+70万円 (勤続年数-20年) |
具体例として
勤続年数15年の方 15年×40万円=600万円
勤続年数25年の方 800万円+350万円=1150万円
退職金控除額は、勤続年数×40万円(最大800万円)となりますが、20年を超える場合はさらに70万円ずつ増加します。例えば、15年の勤続年数の場合は600万円、25年の場合は1150万円が退職金控除額となります。
制度見直しの理由
- 終身雇用が前提になってる
- 勤続年数が長いほど得をする
- 転職をすると勤続年数が0に戻る
現行の制度では、終身雇用を前提とし、勤続年数が長いほど優遇される特徴があります。しかし、最近の日本では働き方の多様化が進んでおり、一生同じ会社で働くことが当たり前ではなくなってきています。この社会の変化を踏まえて、税制調査会では退職所得控除額が勤務年数に応じて増額される仕組みについて、転職を妨げる可能性があるとの指摘がされています。
結局増税されるのでは?といった不安も
「勤続年数による格差を是正する」という方針は明示されていますが、扶養控除の廃止や児童手当の拡充などでも同様の懸念があり、増税の可能性も否定できません。
iDeCoも退職所得の対象
政府が推進しているiDeCoは、掛金が全額控除されるなどのメリットがありますが、受け取る際には所得税が課税されます。 具体的には、年金のように分割で受け取る場合は雑所得として、一括受け取りする場合は退職所得として税金がかかります。 一括受け取りの最大のメリットは、退職所得控除の適用が可能であることでしたが、税制改正により退職所得控除が見直されると、将来的にiDeCoから受け取る金額に対して課税される税金が増える可能性があります。 税金は受け取るタイミングや方法によって関連する規定が変わるため、税制に関する法律改正が行われる際には、概要をチェックすることで対策を講じやすくなります。
iDeCoのメリット・デメリットおさらい
iDeCoのメリット
- 積立、運用中、受け取り時の節税効果
- 運用益も非課税
- スイッチングでリバランスできる
- ポートフォリオの調整が容易
iDeCoのデメリット
- 60歳まで引き出せない制約
- 加入や運用で手数料が発生
- 拠出限度額があり、少ない
- 受取時に所得税が課税
個々の状況に合わせて最善の判断をすることが重要です。なお、具体的な制度や税制は変更される可能性がありますので、最新の情報や専門家の助言をご活用ください。